リモート運用までの道

 私の実家のある越生町は、町の面積の半分以上が山。
 少ない平地は住宅になっていますが、周りは山なのでロケーション的には最悪です。
 そのためにDXを狙うのは障害になっている山の上に移動するかシャックを建てるしか無く、毎回移動している訳にも行かず、シャックを建てるのも簡単じゃないので、メンバーもあきらめていました。
 そんなわけで都会に出てきたのですが、今度は住宅地でなかなかアンテナが立てられずしばらくQRT状態。
 そんな中、某ローカルからリモート運用の話が出て、山の上の某局のシャックの一部を間借りしてリモート運用をやってみたらどうなのと言う事になったわけであります。
 話が出てから約1年かかってやっと実用レベルになりました。

1.使用機材 

 使用する機材類に関しては皆さんの体験記を参考にして、無線機にIC-7410、コントロールソフトにRS-BA1を使う事にしました。
 RS-BA1は有料だったのが気になりましたが、専用ソフトである事、やっぱり音にはこだわりたかった事、問題発生時にサポートが受けられる点から選びました。(サポートは心強かった。途中何度もTS590にすれば良かったのかなと思いましたが、今ではICOMで良かったと思っています。)

2.宅内LANでテスト
 まずはサーバーPC不要のIC-7800を借りて、宅内LANでRS-BA1との接続を行いました。
 クライアント側にRS-BA1をインストールして、説明書のとおりに設定をすればOK。
 IPアドレスの設定(アドレスとサブネットマスクの設定が合っていなかった)でてこずりましたが、無事つながるようになりました。

3.インターネット経由でつなぐ
 次にインターネット経由とする為の設定をおこないました。
 まずダイナミックDNSの設定ですが、当初PPPoEを使ってバッファローのDDNSサービスを使おうと考えました。オーソドックスなやり方です。
 ですが、どうやってもバッファローのサーバーにつながりません。ルーターの設定画面からサーバーをつかまえることができません。
 原因はアカウントの失効でした。
 自宅の光回線をフレッツからKDDIに変更したのですが、KDDIでは接続にパスワードが必要ないので、フレッツ光時代に使っていたネット接続用の設定が無くなってしまったのでした。
 バッファローのDDNSはいろいろ制約が多くて、単純な環境(フレッツひかりにOCNでPPPoE)では良いかもしれませんが、ちょっと環境を変えようと思うとつながらなくなります。その上有料!

 設定のため何度か設置場所への往復が続いたのですが、場所が山の上だけにその場所に行くのも非常に大変。
 他の事情もあって、とりあえず設定まではふもとのローカルの家を借りて実験する事にしました。
 ここでIC-7410を購入しました。リモート運用にIC7800は高すぎます!
 
4.名前解決


 実験にお邪魔させていただいたローカル宅では既に2回線を
使用している(PPPoEによるIPV6接続)ので、PPPoEによる接
続はあきらめて、MyDNSによるDDNSを使用してVPNなしで使
う事にしました。セキュリティー面では不安が残りますが、後述
するように速度面では有効です。
 IPアドレスの通知にはMyDNSでの「mydnsjp-adapterプロジェ
クト」によるラズベリーパイを使用した通知装置を使用しました。
これにより、こちら側のグローバルIPアドレスを知る事ができ、
IPアドレスとドメインの関連付けができます。(俗に言う名前解
決ってやつですかね。IPアドレスさえわかっていれば、アドレス
直打ちでも良いんですけど)
 これは重宝しています。

 但し夏の気温上昇に対しては注意してください。
 フィンをつけてもケースによっては温度が高くなりすぎてハン
グアップします。


ラズパイによるIPアドレス通知
4.ポート解放

 次にポート解放です。
 本システムでは下記のPORT開放が必要です。
   ・電源および避雷コントロール用
   ・パソコン制御(リモートデスクトップ)用
   ・RS-BA1用
 まず、IPアドレスとPort番号を固定しました。
 次にルーターのインターネット側からの解放を行いました。
   ・サーバPCのファイアウオールの解放:PC内でのフィルタを解除
   ・パケットフィルタの解放設定:上記のポートについてルータを通過させる設定
   ・NAT設定:(外部からのアクセスデータを目的の機器(IPアドレス)に振る設定
 この辺はネット上でもすごく詳しく書いてあるサイトがいっぱいありますので、自分に合ったものを探してください。
 私はakakagemaruさんのサイトを参考にさせていただきました。
 私がここで宅内では問題無かったサーバPCが外からつながらないと言う問題が発生しました。。
 サーバに使用したPCには2つのLAN+Wifiがあるので、外とのデータの受け渡し窓口が3つになり、データの受け渡しがどこのポートになるのかはっきりしないために、つながらなくなると言う事がわかりました。(サーバ側には届いている様ですが、応答が返ってこない。)
 基本的に外とのやり取りは一つにするのが鉄則です。私はこれで1ヶ月ほど悩みました。
 予備の為に無線と有線を切り替えようにとかは考えない方が良いです。もちろんIPは各ポート毎に別々に割り振りましたが、解決しませんでした。(時々つながる時もあるのでややこしい)
  余分なポートは「無効」にすることを勧めます。
  ポート解放ができて、先のIP通知がうまくいけば、この時点でRS-BA1はつながるようになります。(もちろんサーバ側とクライアント側へのRS-BA1のインストールは必要です。)

5.音が出ない、歪む

(1)音が出てこない
 無線機のコントロールはできるようになりましたが、今度は音
のやり取りができません。
 私の場合、ローテータコントロール用にサーバPCをリモート
デスクトップ(RDT)でつないでいるのですが、RDTを起動すると
音が止まります。
 音が出ない時、RS-BA1の設定では右図のように無線機の
COMポートが自動検出されません。マニュアルで無理やり設定
すると接続時にCOMエラーと出ます。
 ここまでは何とか一人でやってきましたが手詰まりの状態な
ので、iUSEに連絡してアドバイスをいただく事にしました。
 原因は設定の問題でした。
 リモートデスクトップで接続する際に、リモートオーディオ再生
オプションを
 「リモートコンピューターで再生する」
としないと、サウンドデバイスを認識しない様です。
 そんな事説明書に書いていないヨ。


サーバの設定画面で無線機が認識されない
(2)受信音が歪む
 何とか音は出るようになりましたが、今度は受信音が歪みます。歪み方は過入力状態、無信号時のノイズだけでレベル過多の状態です。送信音は問題無いという事でした。
 宅内LANの別PCでも同様に歪みますが、無線機本体から出る音は問題ありません。
 RemoteControlのAFボリュームを絞っても、クライアント側のRemoteUtilityのレベルを下げても全く改善しません。(音量は下がります) 唯一改善したのはRF GAINを下げた時ですが、そんな事やってられません!
 いろいろやってやっとわかりました。原因はサーバPCのレベル調整でした。
 Win7ではデフォルトの状態ではUSBオーディオの設定が最大値になっています。このためレベル過多になります。
 また、サーバ側において、受信音は入力側、変調入力は出力側とクライアント側とが逆になっています。
 確かに説明書には書いてあるのですが、わずか2行で文字だけの説明なので見落としてしまいました。ポートの設定とかに紙面使い過ぎなんだよなあ。それもICOMのルータで説明しているから、初心者でこれを理解できるの方は少ないんじゃないかなと。
 ポート設定できない人はリモート運用するのは無理なんだから、その分基本設定に紙面割いてほしいってICOMには言いましたけど。
 さらに、この設定、歪まないレベルにするには設定を最大値の5〜10%程度にしなければなりません。
 これもちょっとと言う感じがしましたね。50%程度に下げただけでは聞いてもほとんど改善されません。

サーバーのサウンド設定

 左側の「マイク」が受信音、
(無線機からPCへの入力)
 右側の「スピーカ」が変調入力
(PCから無線機への出力)

 間違えますよね。

6.電源およびコネクタ挿抜
 リモート運用では電源のON/OFF、雷接近時のコネクタの
挿抜ができずに無線機を破壊してしまう恐れがあります。
特にロケーションの良いところでは電波も強いですが、雷の
被害を受ける頻度も高くなります。
 それにIC-7410ではRS-BA1で電源のON/OFFをする事
ができないので、常時つけっぱなしと言うのも気分よくあり
ません。
  このため、リモートコントロールで電源のON/OFFとアンテ
ナ、ロータ、LANの挿抜を行える様な機器を作成しました。
  詳細はこちらを参照してください。


避雷および電源制御
7.免許
 一応受信音の問題は有るものの通信はできる様になりましたので、免許申請をしました。
 添付資料はマニュアルに書いてある通りのものに実際の環境を付けたしたものをを添付しました。
 特に問題もなく、あっさりと免許はおりました。(技適機種なので簡単ですけど、固定局の送信場所変更なので保証認定が必要で、これをうっかりしてました。)

8.結果
 そんなわけでやっと実用化までこぎつけました。
 音も問題無く、遅延もほとんどありません。
 宅内LANでは遅延0、ロス0%、インターネット経由では遅延
10mS前後、ロス0%です。
 必要な帯域はデフォルト(L-PCM、送信8KB/S、受信16KB/S)
で300KBでした。受信を48Kとしても1Mまでは行きません。
 CPUの負荷率も20%以下です。(Celeron847にメモリ4G)




サーバーへの接続
9.総括
 今回の設定でひっかかった点を下記にまとめます。
 ・マニュアルがわかりずらい。
   RS-BA1のマニュアルは紙面の多くをポート設定関係に使っていて、基本設定がわかりずらい感じがします。
   通常の人はポート解放がネックなのかもしれませんが、それは別のところで勉強してほしい。
 ・ネットを経由するリモートではサーバPCのLANはひとつにすべき
   LANは無線/有線あわせて1回線が基本です。高等なスキルを持っている方は別でしょうけど。
 ・サウンドデバイスの設定
   サウンドデバイスは「クライアント側で聞く設定」にしてください。
   また、レベル設定はサーバ側、クライアント側双方で必要です。
   特にサーバー側は受信音が入力側(マイクとかの方)、変調入力が出力側(スピーカとか)となる点に注意し
  てください。
   (クライアント側は受信音は出力側、変調入力は入力側です。)
 ・ラズパイの温度管理
   ラズベリーパイによるIP通知装置ですが、放熱が良くありません。この夏2度ほどハングしてました。
   特にケースに入れるとダメです。
   今はケースに通風用の穴を裏表に空け(もともと開いている小さい穴では自然に風は抜けません、6mm以
  上の穴を開けてください。)ICにはフィンを貼り付けて使っています。